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うかぶひこうとう
浮かぶ飛行島
海野 十三
「少年倶楽部」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 124,009 字 · 249 页
誰か痍をすする者がある。
眼を真赤にしている者がある。
「よおし、よくしゃべった。おい大辻、俺と一しょに艦長室へこい」
そういった長谷部大尉の眼も赤かった。
川上機関大尉の秘密
波間に、杉田二等水兵の首が一つ、ぽつんとただよっている。
南海の太陽は、いま彼の顔に灼けつくように照っている。
彼は海面に波紋をたてぬように静かに静かに泳いでいる。クロールや、抜手にくらべるとはなやかではないが、この水府流の両輪伸こそは遠泳にはもってこいの泳法だ。
杉田二等水兵は、飛行島目ざして必死だ。
「うむ、もう一息!」
この南シナ海には、無数の人喰鮫が棲んでいる。それに、下からぱくりとやられると、もうおしまいだ。
「川上機関大尉。私がそこへ泳ぎつくまで、どうか生きていて下さい。杉田はきっとお助けします」
杉田二等水兵には、誰にもいえない、一つの秘密があった。飛行島へ川上機関大尉と一しょに上陸して、共楽街の前で左右に別れる時、機関大尉から重大なる用事をいいつけられた。
それは帰艦の前に、その共楽街にある広珍という中華料理店に立ち寄って、一つの荷物をうけとって帰れ。そして帰ったら、俺の室に持って行ってその荷物をあけておいてくれ。