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うみからきたつかい
海からきた使い
小川 未明
「少女倶楽部」1925(大正14)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,149 字 · 13 页
あまりに、その音が悲しかったからです。故郷といえば、幾百千里遠いかわからないからです。そして、帰りたいと思っても、いまや、そのすべすらなく、まったく途もなかったからであります。少女は、どうかして、やさしい人の情けによって救われたいと思いました。
空は、時雨のきそうな模様でした。今朝がたから、街の中をさまよっていたのです。たまたまこの家の前にきて、思わず足を止めてしばらく聞きとれたのでした。
そのうちに、街には、燈火がつきました。家のうちのピアノの音はやんで、唄の声もしなくなりました。けれど、哀れな少女は、この家の前を去ろうとせずに、そこに立っていました。
そのとき、りっぱな洋装をしてお嬢さんが出てきました。お嬢さんはこれから、どこかへ出かけられるようすでした。
「お姉さん、わたしもいっしょにつれていってください。」と、門に立っている少女は、呼びかけました。
お嬢さんは、びっくりして振りかえると、そこにかわいらしい、しかし寒そうな、さびしそうなようすをして、少女が自分の顔を見上げていましたので、この子供は、どこの子だろうかと、くびをかしげたが、思い出せませんでした。