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うみとしょうねん

海と少年

小川 未明

「セウガク二年生臨時増刊「夏休み読者号」 12巻7号」1936(昭和11)年8月5日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,765 字 · 4 页

青空文庫

「それは、笛でなくて、ハーモニカでないのかね。」と、おっしゃいました。清さんは、目をまるくして、

「ハーモニカが、聞こえるのですか?」と、ききました。

「ハーモニカなら、月夜の晩でなくとも、きこえるよ。ああそうだ、これから聞かしてあげようか。」と、おっしゃいました。清さんは、まったくびっくりしてしまいました。

「昼間でも、お化けが出るのですか?」

「ははは、そのお化けを見せてあげましょう。」と、先生は、おっしゃいました。

海水浴場の中は、どちらを見ても人の頭でいっぱいでした。赤い水着を着たのや、青いのや、黒いのや、さまざまで、まるでくらげのお仲間のように、ぷかぷかと浮かんでいたのです。こんなに人がたくさんたくさんいるのなら、たとえお化けが出ても怖ろしくはないと思いましたから、

「ええ、そのお化けを見せてください。」と、清さんは、いいました。

「いまごろなら、泳いでいるだろう。さあ、僕といっしょにおいでなさい。」と、いって、清さんは、浮き輪につかまり、先生は、泳ぎながら清さんの背中を押して、沖へ、沖へと出てきました。たちまち、ハーモニカの音が青い、青い波の上からきこえるのでした。