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うみのおどり

海の踊り

小川 未明

「少女画報」1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,419 字 · 7 页

青空文庫

日本海の荒波が、ドドン、ドドンといって岸を打っています。がけの上に、一本の松の木が、しっかり岩にかじりついて、暗い沖をながめて、嵐にほえていました。

そこへ、どこからともなく、紅い、いすかが飛んできて、松の木にとまりました。

「松の木さん、なんで、そんなに腹だたしそうにどなっているのですか?」といいました。

松の木は、頭の毛を逆立て、いまにも岩からはなれて、沖の方へ飛んでゆきそうな、いらだたしげなようすをしながら、

「まだ、あの船が見えないからだ……。」と答えました。

いすかには、ただ、それだけ聞いたのでは理由がわからなかった。

「あの船って、どんな船ですか。それにはだれか、あなたのお知り合いの方でも乗っているのですか。」と聞きました。

ぶっきらぼうの松の木は、いすかにくどくど聞かれるのを好きませんでした。なぜなら、自分の心配をひとに話したって、どうなるものでもなく、また、それにかかわりのない他人が聞いても、なんのためにもなるものでないと思われたからです。で、この小鳥を枝から振り落としてしまおうかと思ったが、黒い目をした、りこうそうな顔つきを見ると、そうもできなく、松の木は、ありのままの話をして聞かせました。