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あざらしとう
海豹島
久生 十蘭
「大陸」1939(昭和14)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,311 字 · 48 页
というと、狭山は、渋々、寝台から離れ、向きあう床几にやってきた。
狭山は咽喉を鳴らして流しこむようにウイスキーをあおっていたが、追々、病的な上機嫌になり、高笑いをしながら、火災の前後の顛末や残留以来の島の出来事を、連絡もなくしゃべりだした。
狭山の話を綜合すると、あの災厄があるまで、この島で比類のない無頼放縦な生活がつづけられていたのである。四人の大工土工は撰りぬきのあぶれものぞろいで、土工の荒木と近藤は殺人未遂傷害の罪で、網走監獄で七年の懲治を受けた無智狂暴な人間であり、他の二名の大工はサガレンや沿海州を流れ歩き、砂金掘りや官林盗伐に従事していた無法粗雑な男どもで、看視員が島を引きあげると、たちまち本性をあらわし、仕事などはそっちのけに朝から飲酒と賭博にふけり、泥酔したあげく、かならず血みどろ騒ぎになるのだった。
技手の清水は、島の秩序を保つために酒樽の入っている倉庫に錠をおろし、銃器をとりまとめて看視員小屋に立て籠ったが、てもなく小屋からひきずりだされ、息の根のとまるほど胴上げをされた。技手を毛布の上に乗せ、四人の暴漢が四つ隅を持ち、毬のように高く放りあげては受けとめる。