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きえたミジアム

消えた霊媒女

大倉 燁子

「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页

青空文庫

という思いと、何かしら凡てを知りたいという慾望とで思い迷った揚句、遂に内容を出しました。それは妻の従兄に当る海軍々人から来た手紙でした。別に大して怪しむべき文句は書いてないんです。誰に見せてもこれで直ちにどうこう云えることは少しもありません。どこかで一緒にお茶でも喫んだらしいだけです。しかし妻は彼に会ったことは秘していましたから、私は少しも知りませんでした。ただそれだけなんですが、私には何と云ったらいいかこの文句以外に何かある物がひそんでいるような気がしてならない。この白いレターペーパーから、文字以上の文字を読もうと焦りました。甞てこの人との間に縁談があったと妻が云っていたことを思い出して、聞いた時はそのままに流してしまった事柄を、急に大事件のように記憶から呼び起しました。すると一度逢ったことのあるその男らしい顔付までが私を悩ませます。こうして帯の間に秘して納ってあることが、普通の人から来た普通の手紙として破くに忍びなかった妻の心を色々と想像して、私は煩悶しました。何か二人の間に云えない秘密があったのではないかと疑いました。私がこんなに熱愛していたのに、こうして鍵のある抽出しに秘しておく、女の周到な用意を憎みました。