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きえたミジアム
消えた霊媒女
大倉 燁子
「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页
私はその恐ろしい力に心を掻き乱され、半狂乱のようになって、事実をたしかめようと焦りました。何という愚しい考えだったのでしょう。もう妻はこの世の人ではありません。それなのに、甞てはその人の心身共に自分がすっかり握っていたのだという安心を得ようと悶える。何という浅間しい事でしたでしょう。池の蛙が鳴いているのが風の合い間に聞えます。山の手も市外に近いこの辺は静かなものです。私の目の前にいる麗子は細面の下膨れで、その長い睫毛に被われた夢みるような両眼を軽く閉じて口許に可愛らしい微笑さえ浮べながら、昔の恋人との話を楽しそうに語り出すのを聞いて、ぬらぬらとした汗が額から流れました。私は段々興奮してきて、いよいよ執念く根掘り葉掘り訊きただしました。しかしどうも肝心の私の知りたいことは恐ろしくて訊けませんでした。ただ遠巻きに探りを入れているだけで、どうもそこへは話が入って行きません。こんなにも真実のことは怖ろしいものかとつくづく思いました。それなのに、麗子は平気でこともなげに自分の方から喋舌ってしまいました。私はハッと思うと一瞬間自分の息が止ったかと思いました。