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きえたミジアム
消えた霊媒女
大倉 燁子
「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页
するとこう全身の血が皆頭へでも上ってしまったものか、体中が急に寒く、がたがたと震えてきて、歯がカチカチと噛み合いました。目の前が暗くなったり、明るくなったり、灯火が渦巻いているようでした。夢中で立ち上るといきなり麗子に掴みかかりました。麗子の柔かい肉に私の両手が力一杯働いたとしか覚えていません。それと同時に彼女の悲鳴をききました。恰度あなたが堀割の傍で小蛇にからまれた時のような悲鳴。今でも耳にこびりついて離れません。
気がついた時は私は実に怖るべき大罪を犯していたのです。白日の下に罪の裁きを受けねばならぬ身となっていました。麗子はもうぐったりと倒れて、息は絶えて居りました。
私は茫然として少時の間は無意識状態に陥ってしまって悲しくもなく、恐怖もなく、まるで空洞の心で目の前の死体を眺めていました。
一時止んでいた雨がまた降り出しました。遠くの方でまた蛙が鳴いています。私はこの蛙の声を今だに忘れません。気が落ちつくと急に怖ろしくなりました。
最初は自首して出る決心で、夜の明けるのを待っておりましたが、その時ふと頭に浮んだのは娘の事でした。申遅れましたが私に一人の娘があるのです。