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きえたミジアム

消えた霊媒女

大倉 燁子

「オール讀物 四巻一一号」文芸春秋、1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,605 字 · 31 页

青空文庫

その考えというのは、この死体を秘密にどこかに隠して一二年生き延び、世間の噂の絶えた頃に自殺してしまうということです。

私は四五年前からある信託会社の地下室の保護金庫を借りて居りました。一間四方位の大きさのものです。その金庫は、当人と会社とが有っている合鍵を同時に用いなければ開けることの出来ない、非常に厳重に出来たものです。私は麗子の死体をトランクに入れて、その金庫の奥へ秘したのです。そうして二ヶ年間先払いで預け、病気保養の名の下に海外へ旅出ちました。

信託会社では私共は信用されて居りますし、長い間の得意ですから、決して疑うような事はありません。それに私の神経衰弱は随分久しいことなので、外国へ行って気を変えて来ようという考えが出たのを、親類の人達は大賛成で喜んでいるのですから、これまた好都合でした。

私はフランス、イギリスと遊び歩いていましたが、始終その不安が附き纏って、誠に生ける屍そのものです。何の興味どころか、ただこうして時の経つのを待っているその苦しさ。自分から求めたこととは云え、何という愚かしいことでしょう。何か妻の事を考えると引いて麗子の事が必ず頭に浮び、それからまた苦しみます。