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りょうみすうだい
涼味数題
寺田 寅彦
「週刊朝日」1933(昭和8)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,617 字 · 10 页
そうして欧米には無い特別のモンスーンの影響を受けている。これだけの条件をそのままに全部具備した国土は日本のほかにはどこにもないはずである。それで、もしもいわゆる純日本的のすずしさが、この条件の寄り集まって生ずる産物であるということが証明されれば、問題は決定されるわけであるが、遺憾ながらまだだれもそこまで研究をした人はないようである。しかし「涼しさは暑さとつめたさとが適当なる時間的空間的週期をもって交代する時に生ずる感覚である」という自己流の定義が正しいと仮定すると、日本における上述の気候学的地理学的条件は、まさにかくのごとき週期的変化の生成に最もふさわしいものだといってもたいした不合理な空想ではあるまいかと思うのである。
同じことはいろいろな他の気候的感覚についてもいわれそうである。俳句の季題の「おぼろ」「花の雨」「薫風」「初あらし」「秋雨」「村しぐれ」などを外国語に翻訳できるにはできても、これらのものの純日本的感覚は到底翻訳できるはずのものではない。
数千年来このような純日本的気候感覚の骨身にしみ込んだ日本人が、これらのものをふり捨てようとしてもなかなか容易にはふりすてられないのである。