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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

あの通り縹致はいいし、それに読み書きが好きで、しょっちゅう新聞や小説本ばかり覗いてるような風だから、幾らか気位が高くなってるんでしょう」

「だってお前、気位が高いから船乗りが厭だてえのは間違ってる。そりゃ三文渡しの船頭も船乗りなりゃ川蒸気の石炭焚きも船乗りだが、そのかわりまた汽船の船長だって軍艦の士官だってやっぱり船乗りじゃねえか。金さんの話で見りゃなかなか大したものだ、いわば世界中の海を跨にかけた男らしい為事で、端月給を取って上役にピョコピョコ頭を下げてるような勤人よりか、どのくらい亭主に持って肩身が広いか知れやしねえ」

「本当にね、私もそう思うのさ。第一気楽じゃないか、亭主は一年の半分上から留守で、高々三月か四月しか陸にいないんだから、後は寝て暮らそうとどうしょうと気儘なもので……それに、貰う方でなるべく年寄りのある方がいいという注文なんだから、こんないい口がほかにあるものかね。お仙ちゃんが片づけば、どうしたってあの阿母さんは引き取るか貢ぐかしなけりゃならないのだが、まあ大抵の男は、そんな厄介附きは厭がるからね」

「そうさ、俺にしても恐れらあ。だが、金さんの身になりゃ年寄りでも附けとかなきゃ心配だろうよ、何しろ自分は始終留守で、若い女房を独り置いとくのだから……なあお光、お前にしたって何だろう、亭主は年中