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ふかがわにょうぼう

深川女房

小栗 風葉

「新小説」1905(明治38)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页

青空文庫

「それもそうだし、第一金さんのとこへ片づいて、辛抱の出来ないようなそんな苦しいことや、愁いことがあろうわけがなさそうに思われるがね。それとも金さん、何かお上さんが辛抱の出来ないようなことを、これからし出来そうってつもりでもあるのかね?」

お光の辞をどう取ったのか、金之助は心持ち顔を赤めて、「馬鹿な! そんな何が、ある理屈はねえけれど……どうもこう、見たところこんなおとなし作りの娘を、船乗りの暴れ者の女房にゃ可哀そうのようでね」

「だって、先方が承知でぜひ行きたいと言うんだもの」

「ははは、あんまりそうでもあるめえて、ねえ新さん」

「ところが、先方のお母なぞと来たら、大乗り気だそうだから、どうだね金さん、一つ真面目に考えて見なすったら?」と新造は大真面目なので。

「ええ、そうですね」と金之助も始めて真剣らしく、「じゃ、私もよく一つ考えて見ましょうよ」

「だが金さん、その写真は気に入ったか入らないか……まあさ、それだけお聞かせなね」

「どうもこう詰開きにされちゃ驚くね。そりゃ縹致はこれなら申し分はねえが……」

「縹致は申し分ないが、ほかに何か申し分が……」

「まあま、お光さん、とにかく一つ考えさせてもらわなけりゃ……何しろまだ家もねえような始末だから、女房を貰うにしても、さしあたり寝さすところから拵えてかからねえじゃならねえ