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ふかがわにょうぼう
深川女房
小栗 風葉
「新小説」1905(明治38)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页
って、そう言うものですからね」
「お光さん」と媼さんは改まって言った、「どうかね、遠慮なしに本当のことを言っておくんなましよね。ほかのこととは違って、御縁のないものならしかたがないのでございますから、向う様がお断りなさいましたからって、私はそれをどうこう決して思やしませんから」
「あれ、阿母さん、私ゃ本当のことを言ってるんですよ、全く向うの人はそう言ってるんですよ」
「つまりそれじゃ、体よくそう言ってお断りなさいましたんでしょう?」
「そんなことがあるもんですか」と言ったが、媼さんの顔を見るといかにも気の毒そうで、しばらく考えてから、「断ったのなら、写真も返しそうなものですけど、あれはもう少し借りときたいと言ってるんですから」
「もう少し借りときたいって?」媼さんも幾らか思い返したようで、「そうすると、お断りなすったわけでもありませんかね」
「そうですとも」と言って、お光はそっと帯の上を撫でる。
「けれど、いつまで待ってくれとおっしゃるのだか、それも分らないのでしょうねえ。あれも来年は二十でございますからね、もう一だの二だのという声がかかった日にゃ、それこそ縁遠いのがなお縁遠くなりますからねえ」