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ふかがわにょうぼう
深川女房
小栗 風葉
「新小説」1905(明治38)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,597 字 · 57 页
女もしばらくは言い出づる辞もなく、ただ愁そうに首をば垂れて、自分の膝の吹綿を弄っていたが、「ねえ金さん、お前さんもこれを聞いたら、さぞ気貧い女だとお思いだろうが……何しろ阿父さんには死なれてしまうし、便りにしていたお前さんはさっき言う通りで、どうも十中八九はこの世においでじゃなさそうに思われるし、と言ってほかに力になるような親内らしい親内もないものだから、私一人ぼっちで本当に困ってしまったんだよ。そこへちょうど吉新の方から話があって、私も最初は煮えきらない返事をしていたんだけど、もう年が年だからって、傍でヤイヤイ言うものだから、私もとうとうその気になってしまったようなわけでね……金さん、お前さんも何だわ――今さらそう言ったってしようがないけど――せめて無事だというだけでも便りをしておくれだったら……もっとも話のようじゃそれもできなかったか知らないが……」
「そうさ、それが出来るようなら文句はねえんだが……」と遣瀬なさそうに面を挙げて、「そりゃね、お光さんが亭主を持とうとどうしようと、俺がかれこれ言う筋はねえ。ねえけれど……お光さん、お前も俺の胸の内は察してくれるだろう」