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せいしんあん
清心庵
泉 鏡花
「新著月刊」1897(明治30)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,494 字 · 26 页
」
「え、分らない。お前さん、まあ、だって御自分のことが御自分に。」
予は何とかいうべき。
「お前、それが分る位なら、何もこんなにゃなりやしない。」
「ああれ、またここでもこうだもの。」
五
女はまたあらためて、
「一体詮じ詰めた処が千ちゃん、御新造様と一所に居てどうしようというのだね。」
さることはわれも知らず。
「別にどうってことはないんだ。」
「まあ。」
「別に、」
「まあさ、御飯をたいて。」
「詰らないことを。」
「まあさ、御飯をたいて、食べて、それから、」
「話をしてるよ。」
「話をして、それから。」
「知らない。」
「まあ、それから。」
「寝っちまうさ。」
「串戯じゃあないよ。そしてお前様、いつまでそうしているつもりなの。」
「死ぬまで。」
「え、死ぬまで。もう大抵じゃあないのね。まあ、そんならそうとして、話は早い方が可いが、千ちゃん、お聞き。私だって何も彼家へは御譜代というわけじゃあなしさ、早い話が、お前さんの母様とも私あ知合だったし、そりゃ内の旦那より、お前さんの方が私ゃまったくの所、可愛いよ。可いかね。
ところでいくらお前さんが可愛い顔をしてるたって、情婦を拵えたって、何もこの年紀をしてものの道理がさ、私がやっかむにも当らずか、打明けた所、お前さん、御新造様と出来たのかね。