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みなとについたくろんぼ

港に着いた黒んぼ

小川 未明

「童話」1921(大正10)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 6,903 字 · 14 页

青空文庫

そして、金もうけをしようというのでしょう。」

「いいえ、あの娘は、そんな下卑た子供ではありません。きっと、あの弟のために、こうして苦労をしているのです。」と、さっきから黙って、じっと娘の踊るのを見ていた女の人がいいました。

人々は、思い思いのことをいいました。中には、金を足もとへ投げてやったものもありました。中には、いろいろのことをしゃべりながら、いつか消えるように、銭もやらずに去ってしまったものもありました。

つつがなく、やがて、その日も暮れようとしていました。海の上の空を、いぶし銀のように彩って、西に傾いた夕日は赤く見えていました。人々は、おいおいにその広場から立ち去りました。うす青い着物をきた姉は、弟をいたわって、自分たちもそこを去ろうとしたときであります。

一人の見なれない男が、姉の前に進み出ました。

「この町の大尽のお使いでまいったものです。ちょっと大尽がお目にかかってお話したいことがあるからいらっしてくださるように。」といいました。

姉は、これまでこんなことをいったものが、幾人もありましたから、またかと思いましたが、その大尽というのは、名の聞こえている大金持ちだけに、娘はすげなく断ることもできないという気がして、少なからず当惑いたしました。