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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
「文芸」1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,232 字 · 33 页
そして今度はすこし優しい声音で云った。
「でも貝原さん、何もかも遠泳会過ぎにして下さい、ね。私、あなたのいい方だってことはよく知ってるのよ」
二三日晴天が続いた。川上はだいぶ降ったと見えて、放水路の川面は赭土色を増してふくれ上った。中川放水路の堤の塔門型の水門はきりっと閉った。水泳場のある材木堀も界隈の蘆洲の根方もたっぷりと水嵩を増した。
普通の顔をして貝原は毎日水泳場へ手伝いに来た。自分の持ちものの材木の流出を防いだり櫓台の錨に石を結びつけたりした。そして見ないような振りをして、やっぱり小初の挙動に気をつけていた。
小初は四日目に来た薫を、ちょっと周囲から遠ざかった蘆洲の中の塚山へ連れて行った。二人は甲羅干の風をしながら水着のまま並んで砂の上に寝そべった。小初は薫を詰るように云った。
「あんた、何でもあたしの方から仕向けなければ……狡いのか、意気地なしなのか、どっちなのよ」
小初の言葉のしんにはきりきり真面目さが透っていながら手つきはいくらかふざけたように、薫の背筋の溝に砂をさあっと入れる。
「よしよ。僕、今日苦しんでるんだ」
薫は肘で払い除けるが、小初は関わず背筋へ入れた砂をぽんぽんと平手で叩き均らして、