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こんとんみぶん

渾沌未分

岡本 かの子

「文芸」1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,232 字 · 33 页

青空文庫

――こんな体……こんな私……いっそなくなってしまえばいい……。小初は子供のように野蛮に自分の体の一ヶ処を捻ってみた。痛いのか情けないのか、何か恨みに似たような涙がするすると流れ出た。また捻った……また捻った……すると思考がだんだん脱落していって頭が闇の底の方へ楽々と沈んで行った。

小初は朝早く眼が覚めた。空は黄色く濁って、気圧は昨夜よりまだ重かった。寝巻一重の肌はうすら冷たい。

「秋が早く来過ぎたかしらん」

小初は独りごちながら窓から外を覗いてみた。

靄だ。

よく見ていると靄は水上からだんだん灰白色の厚味を増して来る。近くの蘆洲は重たい露でしどろもどろに倒れている。

今日は青海流水泳場の遠泳会の日なのである。

小初は気が重かった。体もどこか疲れていた。けれども、父親の老先生が朝食後ひどく眩暈を催して水にはいれぬことになってしまったので、小初先生が先導と決った。

十時頃から靄は雨靄と変ってしまった。けだるい雨がぽつりぽつり降って来た。

小初は気のない顔をして少しずつ集って来る生徒達に応待していたが、助手格の貝原が平気な顔で見張船の用意に出かけたりする働き振りに妙な抵抗するような気持が出て、不自然なほど快活になった。