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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
「文芸」1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,232 字 · 33 页
小初は団扇で二つ三つ床を叩いて追う。その音に寝呆けて呼びもしない父が、「え?」と返事をして寝返りをうつ、うつろな声。――あわれな父とそしてあわれな娘。
小初は父の脱いだ薄い蒲団をそっと胸元へ掛け直してやった。
小初は闇のなかでぱっちり眼を開けているうちに、いつか自分の体を両手で撫でていた。そして嗜好に偏る自身の肉体について考え始めた。小初は子供のうち甘いものを嫌って塩せんべいしか偏愛して喰べようとしなかった自分を思い出した。自分は肉体も一種を限ってのほか接触には堪えかねる素質を持っているのではないかと考えられて来た。自分は薫をさまで心で愛しているとは思わない。それだのになぜこうまで薫の肉体に訣れることが悲しいのか、単純な何の取柄もない薫より、世の中をずっと苦労して来た貝原にむしろ性格の頼み甲斐を感じるのに、肉体ばかりはかえって強く離反して行こうとするのが、今日このごろはなおさらまざまざ判って来た。
自分の肉体がむしろ憎い――一方の生活慾を満足させようとあせりながら、その方法(貝原に買われること)に離反する。矛盾と我儘に自分を悩め抜く自分の肉体が今は小初に憎くなった。