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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
「文芸」1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,232 字 · 33 页
「みなさん。大丈夫よ。いまじき晴れて来ますわよ」
小初が赤い小旗を振って先に歩き出すと、雨で集りの悪い生徒達の団体がいつもの大勢の時より、もっと陽気に噪ぎ出した。
薫も途中から来て交った。濡れた道を遠泳会の一行は葛西川の袂まで歩いた。そこから放水路の水へ滑り込んで、舟に護られながら海へ下って行くのだ。
小初が先頭に水に入った。男生、女生が二列になってあとに続いた。列には泳ぎ達者が一人ずつ目印の小旗を持って先頭に泳いだ。
水の濁りはだいぶとれたが、まだ草の葉や材木の片が泡に混って流れている。大潮の日を選んであるので、流れは人数のわずかな遠泳隊をついつい引き潮の勢いに乗せて海へ曳いて行く。
靄に透けてわずかに見える両岸が唯一の頼みだった。小初のすぐあとに貝原が目印の小旗を持って泳いで来る。薫はときどき小初の側面へ泳ぎ出る。黙って泳いでいる。生徒達は今日の遠泳会を一度も船へ上って休まず、コースを首尾好く泳ぎ終せれば一級ずつ昇級するのである。彼等は勇んで「ホイヨー」「ホイヨー」と、掛声を挙げながら、ついて来る。
行く手に浮寝していた白い鳥の群が羽ばたいて立った。