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こんとんみぶん
渾沌未分
岡本 かの子
「文芸」1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,232 字 · 33 页
こせこせしたものは一切抛げ捨ててしまえ、生れたてのほやほやの人間になってしまえ。向うものが運命なら運命のぎりぎりの根元のところへ、向うものが事情なら、これ以上割り切れない種子のところに詰め寄って、掛値なしの一騎打の勝負をしよう。この勝負を試すには、決して目的を立ててはいけない。決して打算をしてはいけない。自分の一切を賽にして、投げてみるだけだ。そこから本当に再び立ち上がれる大丈夫な命が見付かって来よう。今、なんにも惜むな。今、自分の持ち合せ全部をみんな抛げ捨てろ――一切合財を抛げ捨てろ――。
渾沌未分…………
渾沌未分…………
小初がひたすら進み入ろうとするその世界は、果てしも知らぬ白濁の波の彼方の渾沌未分の世界である。
「泳ぎつく処まで……どこまでも……どこまでも……誰も決してついて来るな」
と口に出しては云わなかったが、小初は高まる波間に首を上げて、背後の波間に二人の男のついて来るのを認めた。薫は黙って抜き手を切るばかり、貝原は懸命な抜き手の間から怒鳴り立てた。
「ばか……どこまで行くんだ……ばか、きちがい……小初……先生……小初先生……ばか……ばか……」