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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

払を持つやら、箒やら、団扇を翳しているものやら、どこに透があって立ち込んだか、鶯がお居間の中に、あれあれという。鴨居から飛んで、到来ものを飾った雪の積ったような満開の梅の盆栽の枝に留ったのを、逃がすなと箒を突出すから、梓は引留めながら件の羽織を脱いで、はらりと投げたのが、中に鶯を包んで落ちた。

手を入れて労り取って、二十四の梓は嬉しそうに、縁側を伝って夫人竜子の寝室に入って、寝台の枕頭に押着けて、呼起して、黄鳥を手柄そうに見せると、冷やかに一目見たばかり。

(私はまだ起きる時間ではございません。)と背後も向かず自若として目を瞑った。その時も梓は顔の色を変えたのであるが、争うこともせず。

(失礼、)といってずッと出て、廊下に立ちながら籠を命じ、持って来る間を、手では、と懐に入れながら、見霽の湯島の空を眺めている内、いかなる名鳥か嚶々として、三度、梓の胸に鳴いたのである。

が、籠が来て懐から出そうとすると、羽ばたきもしないので、早や馴れたかと思うと、あわれ、翼をちぢめて目を落していたのである。蒔絵の鳥籠に、件の盆栽の梅を添えて、わざわざ葬らせに使を出した。