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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页
九
「よ、まあこっちへ来ねえ、松の鮨の兄哥、入れッてことよ。」
強いられて、源さん止むことを得ず。
「御免なさい。」
「さあさあ、」と婆さんも七十ばかりだが如才ない。
九
「聞きねえ、婆さん、御前なんざあ上草履で廊下をばたばたの方だったから、情人を達引くのに、どうだ、こういうものは気が付くめえ。豪儀なもんだぜ、こら、どうだ素晴しいもんじゃあねえか。」
頭は籐表を打った、繻珍の鼻緒で、桐の柾という、源次が私生児を引放して、片足打返して差出した。
「ねえ、こら。」と引くり返して鼻緒を掴んでちょっと捻る。
「どうしたんだね、」と婆さんは膝に手を乗せて蹲まったまま呆れて見ている。
頭は大袈裟に、
「どうしたどころかい、近頃評判なもんだ。これで五丁町を踏鳴すんだぜ、お前も知ってるだろう、一昨年の仁和加に狒々退治の武者修行をした大坂家の抱妓な。」
「蝶吉さんかね。」
「うむ、この節あ数寄屋町に居らあ、あの跳ッ返りめ、お先走りで、何でも来いだから、仁和加の時も、一本引ッこ抜いて使うんだからッて、それ痛い目に逢わないだけにして、本式に習いたいというので、お前ンとこの藤さんに仕込んでもらったな。