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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页
本当か、とばかりで真蒼になったとよ。そうだろう、二百円足らず入ッてたんだそうだ。
それだものこのくらいな達引はしかねめえ。」という、高がこんな下駄を(しかねめえ。)というほどの事はあるまいと思うほど、頭が為振を見て、婆さんはこの年紀になってもその瞼の黒い目に、逸疾く仔細があろうと見て取った。
源次も何となく気がさして、少し不安心になった、引構で、
「頭、もう沢山だ。」
気可愧しそうに装って、もじつきながら、出して取ろうとした手を、外して持更え、
「遠慮をするなッて事よ、何もはにかもうッて年紀じゃあねえ。落語家の言種じゃあねえが、なぜ帰宅が遅いんだッて言われりゃあ、奴が留めますもんですから、なんてッたような度胸があるんじゃあねえか。」
「なにまた詰らないことを、」
「それでなくッて、どうしてお前、これが長火鉢の上へ持出されるもんか、この間もお前、脱いだやつを持って上って、伝が家の帳場格子の中へ突込んで見せたというぜ。」と風見の鴉がくるりと廻って、少し北風が吹いて来る。
「え。」
「その時ぶん撲られなかったのが目っけもんだ。」とずッきり言って、したたかに気を替える。