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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

十三

の奴、内の人かといいたさに、親をば捨てて勘当うけ、お前の女房になった私、どんな事があろうとも、何で愛想が尽きようぞいな。」

菊「そんならおぬしゃあ盗人と、知ってもやっぱり愛想も尽さず、」源「お前と一所に居たいのは、譬にもいう似た者夫婦、」菊「夜盗を働く鬼の女房に、」源「枕探しの鬼神とやら、」菊「そういうお主が度胸なら、明日が日ばれて縄目にあい、」源「お上のお仕置受ければとて、」菊「隙行駒の二人連、」源「二本の槍の二世かけて、」菊「離れぬ中の紙幟、」源「果は野末に、」菊「身は捨札、」源「思えば果敢ない、」

「紀之国屋引」と思いがけず、暗がりの露地の後の方で、うら若い清しい声。

十三

「ほほほほほほ、」と蓮葉に仇気なく笑ったが、再び、

「紀之国屋!」とあてもなく漫ろに気の冴えた高調子。酔ったと見えて、ふらふらして仮色使の背後に立って、

「嬉しいねえ、」

といいながら、無遠慮に一ツその一人の肩を叩く。吃驚して黙って呆れる、女は罪もなくまた笑った。

「ほほほほほ。」

「おや! お蝶さんだ。」と二階の欄干に凭懸ったのが、思わず威勢よく声を立てた。

振仰いで、

「今晩は。」

「神月さん参りました、来たんですよ。