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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页
十七
の傍。
あたかも好し、梓の膝を枕にして、片手を逆に支いて起上ろうとしたが、支えかねて半面を隠して倒れた。件の御所車を染めた友染の長襦袢は、かわり裏のしどけない、裳をこぼれて媚めかしい。
男は懐にした手を出しもやらず、眉を顰めて、
「何だね、その形は。」
「可くッてよ。」
「可かあない、かみさんが見ているよ。」
「可いのよ、ねえ、おかみさん、」
「どうですか。」と極めて慎重に答えた。主婦は心なく飛込むも異なものなり、そのまま階子段へ引退るも業腹なりで、おめおめと見せられる。
「不可いッたッてしかたがない。」
とその玉のごとき手を畳に、はったり。
「私はもう草臥れたんです。」
「重い、しようがないな、おい、ちゃんとおしよ、」と揺り落す勢で、梓は邪険に肩を振った。
十七
「あら、髪がこわれてよ、」と少し横になって、蝶吉は片手を上げて仰向けに梓の胸を押えて、恍惚して嬉しそうに、
「鬢のほつれは枕の咎よ――あれさ、じっとしていらっしゃい。後生だから、」
「構うもんか、怪しからん。」と男はわざと叱るように言って、振落そうとする。
蝶吉は目を瞑って、口をしめ、眉を顰めて、さも切なげに装った、