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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

僕何のために学生となって、法律を研究してると思う、皆親友神月の弁護をするためだね、どうです。」

「どうぞ宜しく、」といって梓は戯れに頭を下げた。

竜田はその薩摩飛白の羽織の胸紐をぐッと〆め、

「さあ、来い。」

「またやんちゃんが始まるな、」と哲学者は両手で頤を支えて、柔和な顔を仰向けながら、若吉を瞶めて剃立の髯の痕を撫で廻す。

「大概分ってるさ、問題というのは神月が子爵家を去って、かの夫人に別れて、谷中の寺に籠城して、そして情婦の処へ通うのを攻撃するんだろう。」

「勿論、」と簡単、がちゃりと雑具の中へ小刀を投出して、柳沢は大跨に開き直り、

「最初、神月がその夫人との中に感情を害したのは、不幸にも結婚の第一日、すなわち式を挙げた日だ。」

「さよう、」と突込んで応ずる竜田の声は明快である。

「き様も知ってるな、僕も聞いた。そうして成程と思ったが、考えて見ると蓋し神月の方が非なんじゃあないか。」

「何、そんなことがあるものか、新婚旅行に出掛けようとして、上野から汽車に乗込むと、まだ赤羽の声も掛らぬうち、山下の森の中で、光りものがした。神月は――おや、人魂が飛ぶ、――と何心なくいったんだ。