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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页
言語道断
二十五
(姐さん、きっとお礼をする、)と梓は心を籠めてはじめていった。
(あら、何ですよ、)
(いいえ、)と押えて、そのまま別れて敷石の上を渡った。額堂の軒、宮の廂、鳥居の下、御手洗の屋根に留まった鳩が、あちらこちらしばしば鳴いて、二三羽、二人が間をはらはらと飛交わした。納豆々々の声遥に、人はあたりになかったのである。――この間二年余相たち申候。歌枕の今夜の逢曳。
言語道断
二十五
「ちょいと今夜は私嬉しいわねえ、こないだから塩梅が悪くッて、それにお前さんは久しくおいでなさらないし、鬱いでばかりいたんですよ。」と急にまたしめやかになった。気の変ることの極めて早い、むしろ鋭いといっても可い。この女の心は美しく、磨いた鏡のようなものであろう、月、花、鶯、蜀魂、来って姿を宿すものが、ありのまま色に出るのである。
梓も可懐げに頷いて、
「ついちっとばかり忙しかったもんだから、病気とは聞いていたけれど。」
「精出して勉強をしていたんですか。」
「ああ、」と何気なく答えたがふと気に懸った様子で浮かぬ顔をした。
蝶吉はもとより何の気もつかないので、
「そう、生意気だねえ。」
「失礼な、人が勉強してるというのに、生意気だということがあるものか。