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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

三十四

(こうやって威張って見せてやろうと思ったのよ。)

梓は余りのことに吹出して、

(シャモの牝はこれでございと言やあしないか、)

(まずね、)と莞爾した暢気さ加減、浅はかさも程があった。

「僕が附いていない日には、お蝶、お前どんな目に逢おうも知れぬ、」と梓は息を吐きもあえず、

「それさえ見棄てて、別れなければならないような、児を堕すなどという、飛んだことをしてくれた。」と蝶吉の項を抱いて口移しに噛んで含めるように、自分の赤心を語るため、今まで久しい間、時に触れ、折に当って、動かされた、至憐至愛の情の切なるを、ここに打明けて語ったのである。

蝶吉は聞くこと半ばにして、色を変えて、心、その心を貫くごとに、ほとんど顔を見らるるに耐えざるごとく、摺抜けて駈出しもしかねない様子に見え、左に、右に、その面を背けたが、梓の手と、声と、語と、真心は、ますます力が籠ったから、身も世もあらず、動きもならずいうこと、ここに到る頃いの、果は、悄然と頭を低れて、腕に落した前髪がひやりとしたので、手折った女郎花の儚い露を、憂き世の風が心なく、吹散すかと、胸に応える。

三十四

「僕だって最初からこういう間の中といっちゃあ、末始終はきっと泣を見なければならないと思うから、今度こそ別れるような話にしようか、今度こそと、その度に悄れちゃあここへ来ると、何