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とろ
瀞
佐藤 垢石
「続たぬき汁」星書房、1946(昭和21)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,908 字 · 30 页
佐川町から六、七里離れた仁淀川の中流にある謙井田の集落へ、雨村と私と伜と三人で、竿をかついで行ったのである。ここは、仁淀川の中流というけれど、左右から高い山と険しい崖が迫った峡谷である。流水には、家ほども大きい岩があちこちに点在して、水は激しては崩れ、崩れては泡となり、奔湍に続く奔湍が、川の姿を現わしている。
川底の玉石はなめらかに、水は清く、流れ速い。そして、ところどころの崖かげには、泡寄りを浮かべて緩やかに渦巻く碧い淵が、清くよどんでいる。この仁淀川は、鮎が大きく育ち、数多く棲むのに絶好の条件を備えていると思う。
謙井田で、三人は五、六日釣り耽った。はじめて仁淀川を見たときに、立派な流相を持っていると感じた通り、この川には大きな鮎が数多くいた。三人は来る日も来る日も、我れを忘れて水際を歩きまわった。
ここの宿は、旅館を営業しているのではないが、毎年夏になると遠くからくる釣り人を泊めるのを慣わしとしていた。雨村は、この宿と古いなじみである。宿を去る朝、雨村は勘定してくれといった。すると、宿の主人の六十五、六歳になる律気な婆さんが一日一人四十銭ずつでよろしいと答える。