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ひのついたかかと

火のついた踵

宮本 百合子

「中央公論」中央公論社、1922(大正11)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,781 字 · 34 页

青空文庫

あなたという人を心にも体にも、美しさ、愛らしさの絶頂に置いて見たい。何からも自由にし、私が陰から照らす光りで、あなたを、漂う金色雲のようにしてあげたいのです。

みさ子 (不快と畏れとを示し)貴方はいやね。そういうことをおっしゃるために、わざわざ薔薇をだしにお使いになったの? 私、こそこそ話は大嫌いよ。それに(力を入れ)――私は、ちっとも、貴方になんか助けて頂こうとは思っていなくってよ。また貴方こそ、私をほんとに愛して下さる方だとも思えやしないわ。芝居はやめ! お友達か? そうでないか? それっきりよ。

谷  奥平さんの存在を、直ぐ頭に持って来るから、あなたはそうむきになるんだ。そうでなく、深く、冷静に、人間の感情生活ということを考えて――抑制と爆発は、決して別々なものじゃあない。いつか……

みさ子 貴方――貴方は、私のしんの心持が解った積りでいらっしゃるの?(静かに、寂しそうに)若しそうだったら、大違いよ。奥平さえ解ってくれないんですもの。私位の年の女が、一旦可愛いと思ったらその人のためにどれほど全心を集注させるか、そのために歓び悲しむか、大抵の男の人になんか、わからないんだと思うわ。