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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
美しい友情だ。愛の勝利であった。
艇長デニー博士のよろこびは、誰よりも大きかった。火星探険協会を起こしてからここに二十五年、遂にその大事業は成功したのだ。その間、博士は、或る時は山師とあざけられ、また或る時は資金は尽きて、ナイフやフォークまで売り払わねばならなかったこともあった。
だが今やそんなことはすっかり忘れていいのである。
だが博士はこの大歓喜に酔ってばかりいるわけにはいかなかった。というわけは、博士が設計し建造したこの宇宙艇は、今漸く火星に着陸したばかりである。仕事はそれで終ったのではない。いやむしろ仕事は今後にあるのだ。
着陸したところは、地球の上ではない。勝手のわからない火星の上だ。気候、風土の違った火星の上である。空気も稀薄だ。重力もたいへん違っている。温度も激しく変る住みにくい土地だ。更に、火星においては、どんな生物にぶつかるかしれない。彼等の心とわれら地球人類の心とが、果してうまく通うであろうか。自分たち一行は、火星生物の恐るべき迫害にさらされるのではなかろうか。ちょうどわれら人類の祖先が、かの有史前において、昼といわず夜といわず、猛獣毒蛇の襲撃にあい、毎日の如く大きい犠牲を払いながら苦闘と忍耐とをつづけたように。