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ひなわじゅう

火縄銃

江戸川 乱歩

「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页

青空文庫

僕は職権をもって調べに来たのだ」

「御調べになるのは御自由ですが、僕はその必要がないと思うのです」

「なぜ?」

「あなたはどうお考えか知りませんが、この事件は犯罪ではないのです。従って犯人もなく、犯行を調べる必要もないんです」

この橘の意外な言葉に、刑事も私も飛び上るばかり驚いた。

「犯罪でない? フン、じゃ君は自殺だと言うんだね」

刑事の言葉には、この若造が何を生意気な、という侮蔑の響が籠っていた。

「イヤ、勿論自殺じゃありません」

「それじゃ過失死とでも言うのかね」

「そうでもないんです」

「アッハッハハハハハ、これは面白い。他殺でもなく自殺でもなく、又過失死でもないか。じゃあいったいあの男はどうして死んだのだね。真逆、君は――」

「イヤ、僕はただ犯罪でないと言ったまでです。他殺でないとは言いません」

「わからないね、僕には――」

口ではそう言ったものの、刑事の顔にはまだ橘を揶揄する様な皮肉な微笑が泛んでいた。その刑事の顔色を見た橘は、グッと癪にさわったらしく、鋭く刑事を睨みつけて言った。

「ここで今私が説明しても、あなたには得心出来ぬかも知れませんから、明日その証拠をお見せしましょう」