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かそうこくふうけい
火葬国風景
海野 十三
「帝都日日新聞」1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页
(ム。――これは板らしい!)
八十助は、ゴトリと手先に触れたものを、板と感じた。板なればどこにある板であろうか。彼は手首を真直に立てて、上の方をさぐった。だが何にも触れない。こんどは腰をすこし浮かしてみた。そして手首をまた動かしてみた。果然なにか手先に触れた。
ゴトン、ゴトン。
(あッ、――上も板だ)
横も板、上も板、下も板らしい。足先で裾の方をさぐってみると、これも板、それなれば頭の上の方も板に違いない。するとこれは一体どんなところへ来ているのだろうか。四方八方板で囲まれたところといえば……。
「おお、そうだッ。――」
八十助の心臓は、早鐘のように鳴りだした。
「これは棺桶の中だ。棺桶の中に違いない!」
彼の胸には、急に千貫もあろうという大石を載せられたように感じた。棺桶の中に入れられている。いつの間に入れられたのか。彼は人事不省から醒めて、生きている悦びを、やっと感じたばかりだったが、その悦びは束の間に消え去った。いくら生きていても、棺桶の中に入れられていては、どうしようもない。彼は望みがないと知りつつも、手足や首をゼンマイ仕掛けの亀の子のようにバタバタ動かした。