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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

ポーニンは、わざとモロのそばへすりよって、そんな風にはなしかけた。

「なあに、大したことはありませんや。このあんばいじゃ、夜明けまでにかたづくでしょう」

「いや、私はもっとはやいような気がする。もう下には、いくらも貨物がのこっていませんよ。すめば、あなたの申出があったように、酒を出します」

「ああ、酒なんか、もうどっちでもいいです」

「いやいや、御遠慮はいらない。倉庫のところからすこしいったところに、あなたも知っているでしょうが、雑草園という酒場がある。あそこへ酒の用意をさせましょう」

「えっ、雑草園ですか。もう、そこへ酒をたのんだのですか」

「いえ、これからたのむところです」とポーニンはいったが「そうだ、あなた一つ雑草園へいってたのんでみてくれませんか。こっちの荷物は、もういくらもなさそうだから、あなたがいないでもいいでしょう」

「そうですね、いってみますかねえ」

と、警部モロはこたえたが、そのじつ彼は心の中で、たいへんよろこんでいた。いよいよだれにも気づかれず、至極自然に上陸ができることになったのだ。

警部モロが、いそいそと舷側を下りて、小艇の中にすがたを消したのを見すまして、平靖号の甲板のうえから、それを見おくっていたポーニンとノルマンは、してやったりと、目を見合わせてにやりとわらった。