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かやくせん
火薬船
海野 十三
「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页
「あっ、船長。手をかしてくれ」
ハルクは、こえをふりしぼってさけぶ。
「なんだ、ハルク」
「ここんところを……」といって、ハルクはひざがしらをさし、
「ここんところを、船長の力一ぱいにしばってくれ。毒が……毒が……」
さっき彼のふくらはぎのところを自分で縛ったが、それがゆるんで、蛇毒が上へまわるのをおそれてのたのみだったらしい。
だが船長ノルマンは、ぬッと立ったまま、あわい電灯の光の下に、冷やかにハルクを見下ろすばかりだった。
「船長。は、はやく……」
「おい、ハルク」
「ええッ」
「くたばるものなら、はやくくたばってしまえ」
「な、なんと……」
「そうじゃないか。お前の不注意で、蛇にかまれたんだ。そのおかげで、おれにまで、つまらない心配と、無駄な時間とをついやさせやがった。お前がはやく死んで呉れれば、おれはたすかるのだ。おればかりではない、全乗組員も、ポーニン委員も、皆たすかるんだ」
「ううーッ」
「お前も、そのくらいのことは、察しがつくだろうがな。お前を医者にかけてみろ。お前が雑草園で、なにをしたかということが、すぐ世間へばれてしまうじゃないか。ノーマ号と平靖号とが、特別の積荷をそろえて、無事このサイゴン港を出航できるまでは、お前のその身体は、だれにも見せたかないんだ」