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はいいろのあねとももいろのいもうと

灰色の姉と桃色の妹

小川 未明

「愛国婦人 470号」1921(大正10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,817 字 · 8 页

青空文庫

妹は、唄にもあきてくると、懐から、紅い糸巻きを出して、その糸を解いて、銀の棒で編みはじめていました。銀の棒は日の光にきらきらとひらめきました。紅い糸は、解けては、緑の草の上にかかっていました。

姉は、妹に別れて、独り北の方へ歩いていきました。そこは、一段低くがけとなっています。がけの下にはさびしい空き地があって、そこには、二、三本の憂鬱な常磐木が空にそびえていました。そして、その黒ずんだ木立の間に混じって、なんの木か知らないけれど、真っ白な花が咲いていました。

その白い花の色は、ほかの色とちがって、冷たく、雪のように見えたのであります。姉は、がけを降りていきました。危うげな路が、がけにはついていたのであります。

その空き地には、冬が残っていました。日の光すらさすのを避けているように、寒い風が、黒ずんだ常磐木の枝をゆすっています。姉は、白い花の咲いた木の下にたたずんでいました。そこには、なく鳥の声もきこえなければ、また飛びまわっているちょうの姿も見えませんでした。あたりは、しんとしている。姉は、なにを思い、なにを考えているのか、身動きすらせずに、黙って白い花の咲く木の下にたたずんでいました。