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てん

点

小川 未明

「新天地」1909(明治42)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,063 字 · 17 页

青空文庫

翁は、説教壇の前に跪いて、其処に凍え固ったものの如く、火の気のない教会堂の広間に眤として祈りを捧げたまま身動きもしなかった。外には北風に煽られて、銀粉のような雪片が、さらさらと硝子窓を打って飛び舞っていた。

物憂げな薄暗い冬の半日は、吹雪の裡に過ぎてしまった。翁は、外に暴れ狂う吹雪も知らぬ如く、全く時間と空間の裡から、見捨てられた人のように眤として身動きもせずに跪ずいて神に何事をか祈を捧げていた。

やがて午後になると町の子供等が、いつもの如く数学を習いに来る時刻となった。――けれどこの頃にはもはや一人減り、二人減りして、毎日欠さずに来る子供は僅かに一人しかなかった。その子供はこの町の、貧しき家の子であった。翁が報酬を取らずに教えてくれるので、少し位ツライことがあっても、今日まで我慢して熱心にやって来るのである。雨の降る日も――風の吹く日も――はた雪の日も――欠かさずにやって来る。

教会堂の時計は三時を打った。

いつも学校が三時に退けると、此処まで来る時間が二十分ばかりかかる。きっとその時刻になるとやって来るのだ。

今日は雪が降って、風が強くて、目口も開かぬ程だから、少し、いつもよりは遅れて来るだろう。