轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
えぼしだけのちょうじょう
烏帽子岳の頂上
窪田 空穂
「早稻田文學 第二百三號」早稻田文學社、1922(大正11)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,432 字 · 15 页
だが、逃げようとはしない。高山の偃松のなかにばかり住んでいる鳥は、人間という生物の、どういう感情をもっているものかを知らないようだ。その烏は、偃松に沿った岩のあいだを、無器用な恰好をして、歩きながら、下のほうへ、ほうへと、見えなくなって行った。
立ちつくしている私の眼の前に、今度は小さな獣があらわれて来た。それは二銭銅貨ほどの大きさの顔をもった、茶色の毛をもったものであった。その獣は、偃松の下から走り出ると共に、その顔をまともに私に向けた。痩せた、眼ばかりの顔のように私には見えた。見えると直ぐに隠れてしまった。
「栗鼠のようだった、」と思ったが、しかしからだは見えなんでしまった。
この二つの小さい生物のあらわれは、私を微笑させた。私は消え去った形を眼の前に保って、一人で微笑していた。
後ろから人が声を懸けた。それは堀君という、東京の学生であった。小林君と同じく、案内を共通にしているところから同行している人である。堀君も烏帽子岩へ登ろうとして来たらしかった。
無口な、それが似合わしいような表情をもった堀君は、今も微笑をたたえながら後ろを振り返った。私もそちらを見ると、小林君と案内と一しょに、偃松の上を渡ってこちらへ来る姿がかっきりと見えた。