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むもうだん

無毛談

坂口 安吾

――横山泰三にさゝぐ――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,319 字 · 17 页

青空文庫

はじめてハゲを見つけられた時は、合せ鏡などをして、自分のハゲをしらべてみたことも一度はあったが、まったく醜悪なものであるから、二度と再び見参に及んだことはなく、今ではどれぐらいのハゲになったか、もっぱら人まかせにしておくのである。

泰三画伯は近々御結婚あそばす筈で、新婚記念に名古屋医大へハゲ退治に出向く由、三十二歳ともあれば、ムリもない。

皮肉なもので、若い時には、ハゲましたのねえ、と頻りにやられたが、今ぐらいになると、もう誰もハゲのことなど言わない。私よりもズッとお年寄の方々が私を同類扱いするようになって、尾崎士郎先生などが、

「君、まだ、歯はぬけないかい?」

「歯がぬける?」

「ウン、そろそろ、ぬけるぜ。あんときは、いゝ医者へ行かなくっちゃアいけないよ。治療が長びいてネ。入れ歯をすると、餅にくッついて、いけないネエ。年だなア。君も、そろそろ、はじまるころだ」

私といくつも違わない年下の方が、こっちの方は、かたくなに私の方を同類から締めだす。同人雑誌の会などへ出ると、

「どうぞ。お年寄、こちら。床の間へ」

「おい、ふざけるな。君と、いくつ、違うんだ」

「いえ、わかってます。