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むほうもの
無法者
豊島 与志雄
「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页
あなたの方は、冗談ですましていらしても、相手の方はそうは参りませんからね。みんな憤慨しておりますよ。中には、心の底のどこかで、ちょっと擽られたぐらいな気持ちになる者も、いないとは限りませんでしょうけれど、だいたいは、大袈裟に申せば、名誉を傷つけられたことになりますでしょう。そしてあなたの方は、不徳義な破廉恥なひとということになりますでしょう。その両方が重って、たいへん面倒なことが持ち上るかも知れません。ねえ、そうではございませんか。」
「分りましたよ。もうその話はやめましょう。いったい、あなたのお話は……。」
「え、わたくしの話が、どうなんですの。」
「あまりもっともすぎて、返答に困るというものです。」
「それでは、もっともでないことを申しましょうか。」
房代夫人はその小さな眼で笑った。
「わたくしが、みんなの犠牲になって、あなたのお伴をしようではございませんか。人中で、おおっぴらに、お約束致しましょう。フグの茶漬けとかを食べに、やまぶきとかいう割烹旅館へ、あなたと二人で、幾日の何時頃参りましょうと、公然とお約束致しましょう。そうしたら、ほんとに連れて行って下さいますか。