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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

」

ちょっと面白く出来すぎてる話だった。志村は他の用事で彼女に葉書を書いたことはあった。温泉の話をしたこともあった。然し、房代夫人の話は、面白く出来てる半面、ただ面白いと聞き捨てるわけにゆかないものを含んでいた。

「あ、おかしなことを思い出しましたわ。あなたはしばらく、野田さんの鎌倉の別荘に行っていらしたことがおありでしょう。あすこに、若いきれいな女中がおりましたわね。その女中さんが、あとで、先生はやさしいよいおかただとほめておりましたそうですよ。そして、よいおかただけれど……と言葉尻を濁すので、よく聞いてみますと、たった一ついやなことがある、と申したそうですの。先生がいつまでもお酒をあがっていらっしゃるので、部屋に引っこんでいると、いきなり部屋の襖をあけて、もう寝たのかいと中をお覗きなさることがあるし、それから、酔っ払って肩をお揉ませなさることがある。それが、とてもいやだった。そう申したそうですよ。」

志村は飛び上りかけて、しいて腰を落着けた。カクテルを一息に飲み干し、煙草に火をつけた。

「それから、まだありますか。なんでも仰言って構いませんよ。」