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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

房代夫人も煙草に火をつけた。

「ですから、志村さん、芸者遊びなんかはよろしいんですけれど、素人の女には、お気をつけあそばせ。」

あとの方をゆっくりと、勿体ぶった調子で彼女は言った。

苛ら立ってくる気持ちを抑えてるうちに、志村はふと、別な疑念を懐いた。

「いったい、どうしてあなたは、そういろいろなことを御存じなんですか。」

「それでは、いまお話したことは、みな本当なんでございますね。」

「それは、僕の方からお尋ねしたいんです。」

「わたくしの聞きましたところでは本当らしゅうございますよ。」

「誰からお聞きなすったんですか。」

「誰からともなく……まあ、世の中から、とでも申したら宜しいでしょうか。」

「それは、あなたたちだけの世の中でしょう。あなたがたの仲間のことでしょう。僕は断っておきますが、普通の人間、庶民の中の一人として、暮しているんです。」

「ですから、あまり勝手なことをなさらないで、普通のひとらしく、御結婚でもなすったらいかがでしょう。」

志村は眉をひそめて黙りこんだ。

房代夫人は彼の手首を押えた。

「ねえ、志村さん、お気に障ったか知れませんが、ほんとはあなたのことを心配してるんですのよ。