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つばくろ(つばくろ)
燕(つばくろ)
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页
のだ。それはそれは、と云って庄野はもういちど梶本に会釈した。
「わざわざ京からとはたいへんでしたな」と庄野が云った、「お住居はずっとあちらですか」
「もう二十年ちかくになるかな」と云って梶本は急にくだけた調子になった、「その、――ですか、でしたかはよしにしよう、昔のなかまが集まったんだから、今日だけはおまえおれでやろうじゃないか」
「口ぐせになってしまって」と庄野は扇子を手にしながら苦笑した、「――なにしろ締りのない性分で、あんまり長く勤めすぎましたよ、ええ、佐藤は早く城代になった代りに、終りはきれいにさっと辞職しましたがね」
「あまりにきれいでもないさ」又左衛門は茶を淹れ替えながら云った、「こっちもずるずると六十八まで勤めてしまったからね」
「あと誰と誰が来る」と梶本が訊いた。
「二人だ」と又左衛門が答えた、「一人は新原宗兵衛、もう一人は平作というんだが、これは会ってみなければわからないだろうな」
「平作だって、姓はなんというんだ」
「ただの平作、いま長浜で小さな料理茶屋をやっているんだ」と又左衛門が云った、「もちろん、もとは家中の者だったが、――まあ会えばわかるよ」