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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

道子夫人はこのあたりに用事があって、今、かえり道であったのだ。

そんな有名な夫人だとは、房枝は、すこしもしらなかった。房枝は、ただもうこの婦人が気の毒になって、自分のハンケチをハンドバックから出すと、道子夫人の羽織のうえの泥を吸いとりはじめた。が、このハンケチも、すぐまっ黒になってしまった。

「ああどうぞ、もう、そのままで」

と、道子夫人は、つつましく、恐縮して、房枝の好意を辞退した。

「でも、たいへんでございますわ」

「いいえ、わたくしが、不注意なのでございました。あなたのお姿につい見とれていましたものでございますから」

「あら、いやですわ、ほほほほ」

と、房枝は赤くなって笑った。

「いえ、それが、ほんとうなのでございますの。お嬢さまは、しつれいですが、今年おいくつにおなり遊ばしたのでございますか。お教え、ねがえません?」

「まあ、はずかしい」

「ぜひ、お聞かせ、いただきとうございますの。おいくつでいらっしゃいます」

なぜか、道子夫人は、道ばたで会った初対面の房枝の年齢を、しきりに知りたがるのであった。なにか、わけがありそうなようすである。

「あのう、あたくし、こんなに柄が大きいんですけれど、まだ十五なんですのよ」