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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
まだ始めての誕生日もこない娘は、私の乳が出ないために、昼も夜も私のそばで泣きつづけてやせていきますの。ついに主人と私とは死を決心しました。しかし娘は死なせたくない。なんとか助かるものなら人のおなさけにすがっても、助けてやりたいと思い、心を鬼にして、ある露地に棄ててしまったのです」
「まあ」
「しかし、私たちは、すぐそれがまちがっていたと気がつきました。そこで、息せききって、娘を棄てた露地へ引返したのですが、そのときはもうおそかったのです。ほんの十分か十五分しかたちませんのに、娘の姿はもう見当りません。私たちは、必死になって娘をさがしまわりました。いいえ、今もなお、私たちはあらゆる手をつくして、娘をさがしつづけているのです、しかしわが子を棄てた罪を、神様はまだお許し下さらないものと見え、娘は未だに私たちのもとへ帰ってこないのです」
夫人は、ハンケチを目にあて、肩をふるわせて忍び泣くのであった。
「まあ、なんてお気の毒なお話しでしょう」
じっと聞いていた房枝は、その話が、他人事とは思えなかった。彼女の身の上にも、それと同じような話がある。房枝は、父母の顔も名もしらない淋しい孤子であった。