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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
長官は、ことばを添えた。
捨子は悲し
話はかわって、その後の房枝はどうなったであろうか。
あのおそろしい雷洋丸の爆沈事件にあい、房枝は、死生の間をさすらったが、彼女ののったボートが、うまく救助船にみつけられ、無事に助けられたのであった。
彼女たちは、その明日の夕刻、横浜に上陸することが出来た。もう無いかと思った命を拾うし、そして故国の土をふむし、房枝の胸はよろこびにふるえた。
ここで、彼女は、同胞のあたたかい同情につつまれて、涙をもよおした。
手まわり品や、菓子や、それから、肌着や服までもらったのである。そぞろ情が身にしみる。
だが、その一方において、外事課の係官のため、厳重な取調べをうけた。なにしろ国籍のあやしい者がぬからぬ顔で入りこんでくるのを警戒する必要があったし、その上、雷洋丸の爆沈原因をつきとめるためにも、生き残った人たちをよく調べる必要があったのである。
「あなたの原籍は?」
係官は、用紙をのべて、取調をすすめる。
「さあ」
房枝は、困ってしまった。彼女は、両親を知らない。だから、原籍がどこであるか、そんなことは知らない。
松ヶ谷団長がいてくれれば、ここは、うまくとりつくろうことができたのであるが、団長は大怪我をしたと聞いた後に、どうなったかよく知らない。