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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

「原籍をいいなさい」

「原籍は存じません。あたくし、あたくしは、捨子なんです」

「捨子だって、君がかい」

係官は、眼鏡越しに、目を光らせた。原籍を知らぬ奴はあやしい。

「でも、おかしいじゃないか。君の話だと、この前、日本を出発して外国へ渡航したそうだね。そのとき、もし原籍を書かなければ、旅行は許可されないよ。そのとき、原籍はどこと書いたか、それをいいなさい」

係官は、明らかに、房枝を、うたがっている様子であった。

そうでもあろう、房枝は、日本人ばなれした大きなからだの持主だったし、皮膚の色も、ぬけるような白さだったし、外国で覚えた化粧法が、更に日本人ばなれをさせていた。

「団長さんと、別れ別れになってしまったものですから、よく覚えていないのですわ」

「それじゃ、君が日本人たることの証明が出来ないじゃないか。え、そうだろう」

「まあ、あたくしが、日本人じゃないとおっしゃるのですか。ひどいことをおっしゃいますわねえ」

「その証明がつかなければ、ここは通せない」

「では、あたくしたち、ミマツ曲馬団の仲間の人に、証明していただきますわ」

それから房枝は、いろいろと願って、生残りの団員たちを呼びあつめてもらった。