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はちゅうかんじけん

爬虫館事件

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页

青空文庫

帆村は、ちょっと辛い質問を決心した。

「園長のお嬢さんは、まだお独身なんですかねエ」

「え?」西郷氏は我が耳を疑うもののように聞きかえした。

「お嬢さんはまだ独身です。探偵さんは、いろんなことが気に懸るらしいですね」

「私も若い人間として気になりますのでね」

「こりゃ驚いた」西郷理学士は大きな身体をくねらせて可笑しがった。「僕の前でそんなことを云ったって構いませんが、鴨田君の前で云おうものなら、蟒を嗾しかけられますぜ」

「鴨田さんていうと、爬虫館の方ですね」

「そうです」と返事をしたが、西郷氏はすこし冗談を云いすぎたことを後悔した。「ありゃ学校時代の同級生なので、有名な真面目な男だから、からかっちゃ駄目ですよ」

帆村は何も応えなかったが、先に園長令嬢のトシ子と語ったときのことと、いま西郷副園長が冗談に紛らせて云ったこととを併せて頭脳の中で整理していた。この上は、鴨田という爬虫館の研究員に会うことが楽しみとなった。

「鴨田さんは、主任では無いのですか」

「主任は病気で永いこと休んでいるのです。鴨田君はもともと研究の方ばかりだったのが、気の毒にもそんなことで主任の仕事も見ていますよ」