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はちゅうかんじけん
爬虫館事件
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页
「研究といいますと――」
「爬虫類の大家です。医学士と理学士との肩書をもっていますが、理学の方は近々学位論文を出すことになっているので、間もなく博士でしょう」
「変った人ですね」
「いや豪い人ですよ。スマトラに三年も居て蟒と交際いをしていたんです。資産もあるので、あの爬虫館を建てたとき半分は自分の金を出したんです。今も表に出ているニシキヘビは二頭ですが、あの裏手には大きな奴が六七頭も飼ってあるのです」
「ほほう」と帆村は目を円くした。「その非公開の蛇も検べたんですか」
「そりゃ勿論ですよ。研究用のものだからお客さんにこそ見せませんが、検べることは一般と同じに検べますよ。別に園長さんを呑んでいるような贅沢なのは居ませんでした」
帆村は副園長の保証の言葉を、そう簡単に受入れることはできなかった。園長を最後に見掛けたというところが、此の爬虫館と小禽暖室の辺であってみれば、入念に検べてみなければならないと思った。
「さあ、ここが爬虫館です」
副園長の声に、はッと目をあげると、そこにはいかにも暖室らしい感じのする肉色の丈夫な建物が、魅惑的な秘密を包んで二人の前に突立っていた。